週末、ものすごい映画をみました。
その名も『マチステの地獄征伐』(Maciste in Hell/Maciste all'Inferno)。1925年(!)のイタリア映画です。当然、TSUTAYAにも、netflixにもありません。古すぎて。
1925年っていったら、日本ではやっと普通選挙がはじまった頃ですよ!そんな大昔にできた映画はさすがにスルーするところでしたが、これが、「無声映画+ピアノ生演奏つき」だったのです
「はずれたらどうしよう」と若干不安だったのですが、冒頭から終わりまで荒唐無稽な展開で「どうなる!どうなる!」と食い入るように見ていて、あっという間の90分でした。
ストーリーは古典的で、イタリア人なのになぜかイギリスで平和に暮らすちょっと荒っぽいけど気のいいマッチョ、マチステが、悪魔の使途に地獄に連れて行かれ、ばっさばっさと悪魔集団をやっつけて、無事地上に戻るという展開です。でもね、影像がまたシュールで凝ってて最高なのです。白黒映画なのに、地上は黄色がかった画面、地獄は赤、その他青い画面もあってとっても幻想的。当時の特撮技術を駆使して、巨人も、ねんど風ドラゴンも(空を飛びます!)、悪魔をいりこのようにわしわし食べる大悪魔もでてきます。悪魔の特殊メイクも本格的でひげもじゃにしっぽにU字型のやり。ダンテの世界がそのまま影像になったような感じです。あと、悪魔がにらみを効かせるとバラがみるみる枯れて花びらが床に落ちるし(昔のモービル石油の宣伝はぜったいこれをまねしたんだと思う)、悪魔は(体の支え棒がうっすら見えつつ)飛びますし、火とともに消えたりします。当然CGが存在する前の話なので、どんだけアイデアマンが集まって作ったんだ!とその想像力に驚かされました。
映画なのに5幕構成で、「第1幕の終わり」「第2幕開始」なんてスクリーンが出るし。そしてピアノの生演奏ですからね~。もう映画というより、歌なしのオペラ?に近い感じです。
伴奏は、ピアノ+ときどきトランペットという構成でしたが、「映画にあわせてピアノを弾く人」を初めてみたので、これまた新鮮。すごいの、90分(正確には96分)、1人の人が映画の画面みながらタイミング合わせてずーっと切れ目なく曲を弾いていきます。これがまた音符の多い装飾装飾したラフマニノフ的な曲で。。よくずっと弾いてられるなー。もちろんスコア見てないしね。これって、楽譜あるのかな?ひょっとしたら即興だったのかな?うーん、どちらにしてもすごかった。映画が終わった後は、「おつかれさま」の意味もこめて、スタンディングオベーションでした。ちなみにこの方、今週末も別の演目で映画のピアノ伴奏やるみたいです。映画の長さのレパートリーをいくつも持ってるって、すごいよね。。やっぱり即興なのかな。
字幕も秀逸でした。イタリアの無声映画なので、影像の合間に画像が切り替わってイタリア語で台詞が映し出され(台詞のまわりの装飾画がまたキレイ)、その下に英語字幕が映し出されます。
この英語の字幕が、「そのころ、地獄政府では・・・」とか、「選挙に落ちたため反抗的な悪魔がおり…」とか、大げさな割りになんだか投げやりな訳で、観客がげらげら笑ってました。「地獄でもやっぱり女は浮気をしている」に至っては、すごい完全な決めつけだし。って、原文がそうなのでしょうけれども。
フェリーニが大ファンだったという『マチステ』シリーズ。(そう、これはシリーズものなのです。)「ソード・アンド・サンダルもの」というジャンルに属するそうです。『スパルタカス』とか『300』の仲間ですね。
ちなみに、上映は、ナショナルギャラリーでした。ということで無料。
◆ナショナルギャラリー・夏の映画シリーズパンフレット
これからもついていきます…
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